インプラントアンカーとは

shutterstock 1089498080 インプラント
orthodontic model and dentist tool - demonstration teeth model of varities of orthodontic bracket or brace

インプラントアンカーとは、矯正治療において歯に力をかけて動かすための固定源とするために、歯肉(顎の骨)に埋入するインプラントのことです。

インプラントアンカーに使用するインプラントは、通常の歯科用インプラントと同じチタン合金製ですが、大きさが小さいというのが特徴です。

通常のインプラントは直径が最低でも3mm程度ありますが、インプラントアンカーは2mm以下です。長さも通常のインプラントの場合は最低でも8mm程度ありますが、インプラントアンカーは5mm程度のものもあります。

インプラントアンカーを埋入し固定源とすることで、歯に大きな力をかけることができ、歯を早く確実に動かすことが可能となります。

・インプラントアンカーを使用する意義

矯正治療は、歯を動かすことによって理想的な歯並びを得るための治療です。

特に歯を大きく動かすためには、それなりの固定源が必要です。

固定源がしっかりしていないと、動かす予定のない歯まで動いてしまうことがあります。

従来の矯正治療における大きな固定源は、口の外に固定源となる装置を装着する顎外固定に依存することが多くありましたが、インプラントアンカーの登場で、口腔内に強力な固定源を手に入れることが可能となりました。

・インプラントアンカーを使用することのメリットとデメリット

インプラントアンカー
orthodontic miniscrew and elastic chain on function

インプラントアンカーを使用するメリット

  • 奥歯が前に動くことを防げるため、抜歯したスペースを最大限前歯を後ろに下げることに使える

奥歯を支えとして前歯を下げると、どうしても反作用で奥歯が少し前に動いてしまいます。

大幅に前歯を下げたい時はインプラントアンカーを用いることで奥歯に負担を掛けず奥歯の位置を維持したまま前歯を下げることができます。

  • 臼歯部の後方移動が可能

従来の矯正治療では、臼歯を後方へ移動することは大変困難なことと考えられていました。

しかし、インプラントアンカーを固定源とすることで、臼歯部に強力な後ろ向きの力をかけることが可能となり、臼歯部の後方移動が容易になりました。

臼歯部の後方移動が可能になったことで歯を動かすために必要なスペースを作るための便宜抜歯や、歯の両端を少し削るディスキングを回避できることもあります。

  • 矯正期間の短縮が可能

強力な固定源を得ることで歯を大きく動かすことができます。

また、複数の歯を同時に動かすことも可能のため、結果として矯正治療期間の短縮に繋がります。

  • 外科矯正治療を回避できる可能性

不正咬合が通常の矯正治療で治療不可能と判断された場合は、顎の骨を切断して骨格的に不正咬合を治療する外科矯正(手術)を行います。

インプラントアンカーを使用することで、大きく歯を動かせるようになったため、従来であれば外科矯正が適応な症例の場合でも、外科矯正を回避することが可能になる場合があります。

インプラントアンカーを使用するデメリット

  • インプラントアンカーが脱落する可能性もある

骨の密度が小さい場合や、インプラントと骨がうまく接合しない場合は、矯正治療中にインプラントアンカーが脱落することがあります。

その場合もう一度インプラントアンカーを埋入することは可能ですが、再度脱落する可能性もあります。インプラントアンカー周囲を毎日丁寧に清掃し、衛生的な状態を保つことも大切です。

  • 動かす歯の根が吸収されてしまうことがある

あまりにも強い力で歯を動かすと、歯の根が吸収してしまうことがあります。

歯は歯根膜という歯と骨を介在する膜の破壊と再生を繰り返しながら動きます。

強い力をかけてしまうと、歯根膜の再生能力を阻害してしまうため、その代償として、歯の根が吸収してしまうことがあります。一度歯の根が吸収してしまうと元に戻ることはありません。

根が短くなったり、弱ったりすると、歯がグラグラし、最悪の場合歯が脱落してしまうこともあります。

・インプラントアンカーの施術の流れ

インプラントアンカー
  • 麻酔

インプラントアンカーを埋入する部位に麻酔を行います。必要であれば表面麻酔をし、できる限り痛みを抑えるようにします。

抜歯をしたり、骨の深いところまでインプラントアンカーを埋入するわけではないため、麻酔の量としては少量です。

  • 埋入

インプラントアンカーを埋入します。通常の歯科用インプラントのように、歯肉をメスで切開し、中の骨を露出させたりはしません。

歯肉の上から直接インプラントを埋入します。麻酔による止血効果もあるため、埋入時の出血量も最小限に抑えられます。当然、神経や血管がある場所は避けて埋入します。

  • 止血、消毒

埋入が終了したら、埋入部位の止血、消毒を行います。歯肉を切開していないので、縫合も必要ありません。必要に応じてレーザー等で止血します。

  • 鎮痛剤、抗生物質の処方

痛みが出ることはそれほど多くはありませんが、念のため鎮痛剤と、感染予防のための抗生物質が処方されることがあります。

・インプラントアンカーの痛みはいつまで?

インプラントアンカーを埋入した後の痛みは人にもよりますが、痛みがほとんどないことも多いです。仮に痛みが出たとしても、1週間ほどで引きます。痛みだけでなく、違和感が出る人もいます。

・インプラントアンカーの費用

インプラントアンカーの費用は自由診療のため、歯科医院によって異なります。

相場としては1万円から5万円以内の医院がほとんどです。

矯正治療費の中に含まれている可能性もあるので、インプラントアンカーを使用した矯正治療を提案された際には、事前に確認するようにしましょう。

・インプラントアンカーと口内炎

インプラントアンカーは先端がゴムやワイヤーを引っ掛けるために、ネジのような形をしています。

それが頬の粘膜に擦れたりすると、口内炎になることがあります。

特にインプラントアンカーを埋入した直後は、粘膜が慣れていため、口内炎になる確率が高いです。

口内炎ができたときは、口内炎の部分に塗り薬を塗布するか、インプラントアンカーのネジのような部分をワックスで覆い、粘膜に擦れないようにします。

・矯正治療終了後のインプラントアンカー

矯正治療が終了した後は、インプラントアンカーを除去します。

除去した後は、傷口が1週間程度残りますが、1ヶ月程度するとほぼ完全に傷口はなくなり、跡も残りません。

まとめ

インプラントアンカーを利用することで、歯を動かすために必要な強力な固定源を手に入れることが可能になります。

これにより、矯正治療の治療範囲がさらに広がります。

従来の歯科用インプラントと異なり、インプラントアンカーは施術したことによるトラブルが比較的少ないです。インプラントアンカーを埋入する治療計画を提案された際には、その特徴を十分理解した上で治療を受けるようにしましょう。

image執筆  歯科医師/issy

国立歯学部卒業後、東京医科歯科大学歯学部附属病院で研修、現在勤務医として一般歯科、矯正歯科に携わっている。

日本口腔インプラント学会所属

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