顎関節症とは?原因と治療法
顎関節とは
頭蓋骨の一部である側頭骨の下顎窩と下顎骨の下顎頭を結ぶ関節です。
人間の関節の中で唯一左右の関節が連動して動きます。
下顎窩と下顎頭の間には関節円板という軟骨があり、これが顎関節の動きに連動して動き、顎関節の動きをスムーズにさせます。また、顎関節は軟骨や筋組織や線維組織が複雑に入り組んでいて、
様々な原因で顎関節が障害を受けると顎関節症になります。
①顎関節症の原因
顎関節症には以下のような原因があり、その原因が複数に及ぶ場合もあります。
原因はひとつとは限りません。当てはまるものはありますか?
・ストレス
精神的なストレスは顎関節に関わる筋肉を緊張させ、筋肉自体の痛みや硬直を引き起こし、顎関節自体の動きが悪くなることもあります。
・歯ぎしりや食いしばり
歯ぎしりや食いしばりを無意識にすることによって歯が擦り減ります。これにより咬み合わせが低くなり、顎関節に負担がかかります。
・体癖
無意識に体の一部及び全体に負担がかかる癖を体癖と言います。
ほお杖をつく、うつぶせ寝、猫背など…
体癖によって顎関節に負担がかかり、歪みが生じることがあります。
・外傷
顎関節そのものへの外傷、骨折だけでなく、下顎骨体への介逹骨折(下顎に受けた衝撃によって下顎頭が骨折する)によっても顎関節症を引き起こすことがあります。
・咬み合わせ不良
入れ歯や被せ物の咬み合わせが悪いと、左右の咬み合わせのバランスが崩れ、顎関節に負担がかかります。これによって顎関節症を引き起こすことがあります。
・偏咀嚼
片側に歯がない、あるいは咀嚼すると痛みを生じる歯が存在すると、そのような部位では咬まなくなります。
これにより噛み方に偏りが出て特定の歯に負担がかかるようになり、顎関節症を引き起こすことがあります。
②顎関節症の症状
顎関節症の主な症状はこちらです。当てはまるものはありますか?
・顎関節が痛む
・顎関節が動くときに音がする
・口が開けにくくなる
・痛み
顎関節症になると顎の周囲が痛いと感じることがあります。
顎関節自体の痛みを生じることもありますが、顎関節の周りの筋肉が痛いと感じることがあります。
・開口時または閉口時の音
開口運動や閉口運動をすると顎関節が「カクッ」と音がすることがあります。
これは関節を円滑に動かすための軟骨(関節円板)が、正常の位置から転移したことによるものです。
・開口障害
顎関節の動きが悪くなると、口を今までのように大きく開けることができなくなります。
これにより発音障害や摂食障害を発症することもあります。
③顎関節症の治療
・開口訓練
開口障害がある場合は開口訓練を行います。開口訓練は患者さん自身が行うリハビリです。
一日数回行うのが効果的ですが、入浴時に行うと顎関節の周囲の筋肉がほぐれているため、より効果的です。
・筋マッサージ
顎関節の周囲の筋肉に痛みがある場合は、筋マッサージをすることによって筋肉をほぐします。
顎関節症でよく痛みがある筋肉は咬筋と側頭筋という筋肉です。
開口訓練と同じように、入浴時に行うと顎関節の周囲の筋肉がほぐれているため、より効果的です。
・関節円板正位訓練
「カクッ」と音がする場合は関節円板を正しい位置に戻そうとする訓練を行います。
・顎関節症と矯正治療
顎関節症が矯正治療で治療することが可能かについては、結論から言うと難しいのが現状です。
矯正治療で咬み合せをよくすることは可能ですが、それだけで顎関節症がよくなるとは限りません。
何故ならば、顎関節症は咬み合わせ以外にも様々な原因が絡んでいる可能性があるからです。
また、矯正治療中に今までなかった顎関節症状が出る場合もあります。
痛みが強い場合や、その他生活に支障が出る場合は、矯正力を弱めたりすることによって対応します。
・顎関節症とインビザライン矯正
顎関節症を改善するためにインビザライン矯正を用いることは、他の矯正治療と同じように万能ではありません。
過蓋咬合や開咬をはじめとする咬み合わせが原因の顎関節症であれば改善する可能性はありますが、確実に症状が改善する保障はありません。
また今まで顎関節症状がなかった患者さんが、インビザライン矯正を始めた後に顎関節症状が出る場合があります。
・スプリント療法
スプリント療法はスプリント(マウスピース)を口腔内に装着し、顎関節を安定化させ、また歯ぎしりや食いしばりをしても顎関節に負担をかけないようにする治療法です。
治療目的によってスプリントの形状が異なります。
一番よく使用されるのが、全歯列接触型スプリントです。
スタビリゼイション型のスプリントともいいます。その名の通り、スプリントを装着した際に上下の歯を均等に接触させます。
一部の歯にかかる咬合力を分散し、顎関節を動かす筋肉の緊張を緩和することによって顎関節症の症状を軽減させます。
・薬物療法
急性症状として痛みがある場合、または痛みが強い状態が続く場合はお薬を使います。
急性症状がある場合は第一選択として非ステロイド性抗炎症薬が使用されることが多いです。
具体的な商品名で言えば、ロキソニンやボルタレンが該当します。
筋肉の痛みには、筋肉の緊張を緩和する目的で経口の筋弛緩剤が使用されることがありますが、副作用も強いため服用には注意が必要です。
痛みが続く場合は抗うつ薬や漢方薬が使用される場合もあります。
・外科療法
顎関節に組織の癒着や骨の変形が見られる場合は外科手術の適応になることもあります。
基本的には大きな病院の口腔外科で手術を受けることになります。
まとめ
顎関節症は原因になる要素がいくつか存在する場合があります。
顎関節症と診断された場合、自分の症状と原因に合った治療から始めることが大切です。
まずはかかりつけの歯科医院を受診しましょう。
執筆 歯科医師/issy
国立歯学部卒業後、東京医科歯科大学歯学部附属病院で研修、現在勤務医として一般歯科、矯正歯科に携わっている。
日本口腔インプラント学会所属