矯正が必要な人と必要がない人の違いは?
先生、矯正が必要な人と必要ない人の違いって何ですか?
矯正学的な歯並びの乱れや噛み合わせの異常がある人は、矯正が必要な人です。
ただし患者さんが矯正を必要だと感じているかどうかも大切なので、難しいところです。
今回は、矯正が必要な人と必要ない人の違いについてお話します!
矯正が必要な人と必要ない人の違い
矯正が必要な人と必要ない人の違いは、見た目が気になっていたり、噛み合わせが悪くて日常生活で食事や発音などに支障が出ていたりしているか、
歯並びを治したい気持ちがあるかどうかです。
え?「矯正が必要なレベル」とかの明確な違いは無いんですか?
そうですね。
矯正はお口の機能改善だけでなく、見た目を整える治療でもあります。
矯正が必要かどうかは、患者さんの主観も判断基準のひとつになるため、
必要だと明言することは難しいです。
矯正の専門家と患者さんの矯正の必要性の違い
出っ歯や受け口、開咬、過蓋咬合(ディープバイト)、叢生(ガチャ歯・乱杭歯・八重歯)などの矯正学的に問題のある歯並びは、歯にかかる力のバランスの乱れや歯の清掃不良が起こりやすく、これらはすべて虫歯や歯周病、口臭の発生や悪化に繋がります。
また、噛む機能と発音機能の低下や顎関節への悪影響も懸念されます。
特に、噛む機能が低下すると脳の機能低下や消化不良、メンタルにも影響を与えるといわれており、
矯正の専門家から見れば、患者さんが日常生活に不自由を感じていなくても、
矯正学的に問題のある歯並びや噛み合わせは矯正が必要だと考えます。
しかし人間の身体は、最低限の機能が維持できる形に顎の骨や歯並びを変化させながら成長します。
そのため、よほど重症でない場合は日常生活に支障を感じない人も多く、
歯並びが悪くても不自由がないので、矯正は必要ないと考える患者さんもいます。
矯正の必要性は健康保険適用か否かでも違う
矯正の必要性に関する考え方は、健康保険適用の症例か否かでも違います。
顎変形症や3歯以上の前歯の萌出不全、厚生労働省が認める疾患による歯列不正は、健康保険で矯正治療を受けることができます。
これらは「病気が原因で口の機能に影響が出ており、機能を改善するために矯正が必要である」と国に認められています。
一方、国が認めた病気による不正咬合に該当しない場合は、見た目を美しくすることや虫歯や歯周病などの予防的な側面が強いため「健康保険が適用されない=矯正の必要性は低い」とされています。
そのため、健康保険が適用になるレベルの症例の方は矯正の必要性が高く、それ以外の方の矯正の必要性は低いということになります。
しかし、歯並びによる見た目のコンプレックス、発音や食事に不便があるかどうかは個人の感じ方によるので、保健適用にならなくても本人が必要だと思えば、矯正が必要だといえます。
機能的に不便を感じていなくても、歯並びをステータスとする欧米の人と仕事をする機会が多いという理由で、矯正を希望される方もいます。
矯正が必要な症例と必要ない症例
矯正が必要かどうか判断する基準はありますか?
矯正学的に問題のある歯並びかどうかを基準にするのも方法のひとつです。
矯正学的に矯正が必要な症例と必要ない症例をご紹介します。
矯正が必要な症例
矯正が必要な症例は以下の通りです。ひとつだけでなく、複数の症例が混在していることもあります。
- 上顎前突(出っ歯)
- 下顎前突(受け口)
- 過蓋咬合(ディープバイト)
- 開咬
- 叢生(そうせい)
- 空隙歯列(すきっ歯)
- 交叉咬合(すれ違い咬合)
- 上下顎前突
上顎前突(出っ歯)
上の歯が前に突き出ている症例です。上の歯が外側に向かって生えているものや、骨格的に上顎が大きい場合などがあります。
唇が閉じにくく、口を閉じたときに口元が前に出て見えます。また、笑ったときにガミースマイルになりやすいです。
下顎前突(受け口)
噛んだときに、下の歯が上の歯よりも前に出てしまう症例です。歯の生える向きや下顎が大きいことなどが原因です。
重度症例になると発音や食事がしにくくなったりします。
過蓋咬合(ディープバイト)
噛んだときに下の歯が見えないくらい上の歯が被さっている症例です。
噛み合わせが深く、重度症例になると下の前歯が上顎の歯茎に当たってしまい、傷ができやすかったり食事に支障が出ることがあります。
開咬
噛んだときに前歯が噛み合わない症例です。
前歯で食べ物を噛みきれないほか、飲み込みや発音にも悪い影響が出やすいです。
叢生
歯並びがデコボコしており、隣り合った歯が重なって生えていたり、八重歯になっていたりする症例です。
歯と歯の間や引っ込んでいる歯に汚れが溜まりやすく、上手く歯磨きができていないと虫歯や歯周病、口臭などのトラブルを引き起こしやすいです。
空隙歯列(すきっ歯)
歯と歯の間に隙間がある症例です。
歯列全体に隙間ができる場合や上の前歯の間にだけ大きな隙間ができるなど、さまざまなバリエーションがあります。
歯と歯の間から息が漏れて発音がしにくかったり、笑ったときに前歯の隙間が目立ってコンプレックスに感じたりすることがあります。
交叉咬合(すれ違い咬合)
交叉咬合(こうさこうごう)とは、奥歯が上下反対に咬んでいる状態のことをいいすれ違い咬合ともいわれます。 噛みあわせがズレているため顎に負担がかかり悪影響を及ぼし主に顎関節症の原因にもなります。食べ物も噛みにくくなります。
上下顎前突
上下の歯が前に出ている噛み合わせを上下顎前突と言います。 顎の骨が上下共に前に出ている場合と、歯だけ前に出ている場合があります。 口が閉じにくく、口が乾燥しやすかったり、一緒に開口になっている場合もあります。
矯正が必要ない症例
矯正が必要ないのは、矯正が必要な症例に該当しない人です。噛み合わせに問題がなく、歯並びで気になるところがない人は矯正の必要はありません。
あなたは矯正が必要な人?必要ない人?セルフチェック
矯正が必要か必要ないかをセルフチェックしてみましょう。ひとつでもチェックが付く場合は、矯正が必要な可能性があります。
- 歯並びの見た目が気になる
- 噛みにくいと感じる
- 発音がしにくいと感じている
- 歯並びが悪いせいで歯磨きがしにくい
- 歯科医院で歯の不調に噛み合わせが関係していると言われた
- 食べ物がうまく噛めない
- 矯正が必要な症例に該当している
- 上顎前突(出っ歯)
- 下顎前突(受け口)
- 過蓋咬合(ディープバイト)
- 開咬
- 叢生(そうせい)
- 空隙歯列(すきっ歯)
- 交叉咬合(すれ違い咬合)
- 上下顎前突
矯正が必要だと感じたら矯正歯科に相談しよう
矯正の必要性は、矯正の専門家から客観的に診た状態と本人の感じ方や希望によって異なります。
そのため、矯正が必要だと感じたら、矯正専門の歯科医院で相談してみるのがおすすめです。
365dentistでは矯正や審美歯科など、お口の健康と美に関するお役立ちコラムの掲載や歯科医師に気軽に質問できるオープチャットの運営などを行なっています。
本格的に矯正をお考えの方には、歯科医院探しのお手伝いも行なっていますので、興味のある方はぜひご活用ください!
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365dentist総監修 歯科医師/勝屋友紀子
長崎大学歯学部卒業、〜2018 九州医療センター、2018〜現在 都内歯科クリニック勤務
監修 歯科医師/Naomi
臨床研修終後、都内審美歯科勤務。現在は歯科医師/歯科ライター