「顎関節症ストレッチの方法を歯科医師が伝授!自宅で簡単!」
顎関節症は一言で言えば顎の痛みや違和感ですが、その原因は多岐に渡ります。
顎関節症になった場合の治療方法も様々ですが、自宅でも簡単にできるストレッチが有効なものは、どのような顎関節症なのかを解説していきます。
①顎関節とは?
顎関節は下顎の骨と頭蓋骨の一部である側頭骨という骨とを結ぶ関節です。
その名の通り、顎の動きに合わせて動く関節です。
人間の関節の中で唯一両側の関節が連動して動く関節でもあります。
顎関節には動きをスムーズにするために関節の間に関節円板という軟骨が存在しており、また顎関節の周りには非常に多くの筋肉が密集しています。
②顎関節症とは?その症状は?その中でストレッチで治るものは?
顎関節症は顎関節に何らかの問題が起こった時に発症する病気です。
顎関節症の症状としては、
顎関節自体の痛みや、
口を開け閉めする時の痛み、
開口障害(口を大きく開けられない、または閉じれない)、
口を開けるとき、あるいは閉じる時の関節音(クリック音)等です。
顎関節症には
骨の変形によって起こるものや、
顎関節を動かす筋肉が緊張して動きが悪くなって起こるもの、
関節円板の動きが悪くなり起こるもの、
顎関節周囲に腫瘍等のできものができて動きが悪くなり起こるものなど、
様々な原因があります。
決して全ての顎関節症に対して、ストレッチが効果的なわけではありません。
③顎関節症の改善にはストレッチが効果的?
顎関節症の治療は、マ
ウスピースを作製して顎関節を安静にするマウスピース療法、
痛みや筋肉の症状に対しては鎮痛剤や筋弛緩剤等が処方される薬物療法、
外科的に腫瘍等のできものを除去することや、
顎関節の動きをよくする外科療法、
そしてストレッチによる緩和療法があります。
顎関節症の中でストレッチで治るものは、顎関節を動かす筋肉の緊張により動きが悪くなって起こるものと、関節円板の動きが悪くなり起こるものの2つです。
逆にそれ以外のものは、ストレッチだけでは治癒しません。
④顎関節症に効くストレッチ方法5つ!
開口ストレッチやスライドストレッチは関節円板の動きを改善するもので、舌ストレッチや首のストレッチ、咀嚼筋のストレッチは筋肉の緊張をほぐすストレッチです。
❶開口ストレッチ
口を無理のない範囲で大きく開けます。開いたまま10秒から15秒程度キープします。
その後口を開いたまま下顎を前に突き出します。
その状態で、また10秒から15秒程度キープします。
その後下顎を前に出しまま、口を閉じます。口を閉じたら下顎を元に戻します。
関節円板の動きが悪くなった時に有効なストレッチです。
❷スライドストレッチ
口を「い」の状態にして顎を左に動かします。
その状態で10秒キープし、元に戻します。次に顎を右に動かし、その状態を10秒キープします。
次に口を大きく開け、開いたまま顎を左に動かします。
その状態で10秒キープし、口が開いたままの元に戻します。次に顎を右に動かし、その状態を10秒キープします。最後に口を閉じます。
関節円板の動きの改善だけでなく、咀嚼筋の緊張も緩和することができます。
❸舌のストレッチ
舌を口を閉じた状態で外側の歯肉をなぞるようにゆっくり時計回りに回します。
反時計回りにも同じように行います。おおよそ10回程度が目安です。
また、舌を突出させて、10秒程度キープし、その後左右に舌を動かすことでも舌のストレッチになります。
舌のストレッチは舌骨上筋群という口を開ける時に使用する筋肉の緊張を取ることができます。
❹首のストレッチ
片方の手を頭頂部に乗せて、顔を頭頂部に乗せた手の方に傾けます。
このとき、耳が肩につくくらいに傾けます。
反対側の手は床の方向に向けて伸ばします。
この状態を15秒から30秒程度続けます。
次に同じ姿勢で今度は脇を見るように頭を前下方に傾けます。
この状態も15秒から30秒程度続けます。片側が終了したら、もう片方でも同じことを行います。
胸鎖乳突筋を中心とした筋肉を伸ばすストレッチです。
❺咀嚼筋のストレッチ
咀嚼筋は顎関節を動かす筋肉で、特に口を閉じる時に使用する筋肉です。
咀嚼筋の中でも側頭筋と咬筋は外から簡単に触れることが可能な筋肉なので、緊張した際にほぐすことが簡単にできます。
側頭筋のマッサージはコメカミよりやや前上方部分に掌をあて、円を描きながら揉み込むように時計回りにゆっくりマッサージを行います。
10回ほど終了したら、反時計回りに同じように行います。
咬筋のマッサージは頬の部分で、かみしめた時に大きく動いたところに咬筋が存在するため、掌を当てて咬筋の場所を探ります。
咬筋の場所が判明したら側頭筋のマッサージと同じように、円を描きながら揉み込むように時計回りにゆっくりマッサージを行います。
10回ほど終了したら、反時計回りに同じように行います。
⑤顎関節症予防のための3つのポイント
❶悪習癖を作らない
顎関節症の原因の一つに頬杖や片咬み癖などの口腔悪習癖があります。口腔悪習癖は顎関節に負担をかけ、顎関節症を発症させることがあります。口腔悪習癖を作らないことが顎関節症予防の大事な要素になります。
❷TCHのケア
TCHとはTooth Contacting Habitの略で、歯の接触癖があることを指します。TCHがあると顎関節自体に負担がかかり、顎関節症を引き起こすこともあります。また、TCHにより歯が咬耗し、咬み合わせが低くなることで顎関節症を発症することもあります。同じ理由で歯ぎしりや食いしばりも顎関節症の原因となるため、歯と歯を接触しないようにする意識付けや、歯ぎしり用のマウスピース作製等のケアが必要です。
❸ストレスを溜めない
ストレスは顎関節症発症の大きな要因の一つとされています。ストレスが溜まると、不随意運動(自分では気づかない脳の指令による運動)により、顎関節に負担がかかり顎関節症を発症することがあります。
まとめ
顎関節症は、一旦発症すると一度治癒したとしても、再び発症することも稀ではありません。
顎関節症の原因にもよりますが、適応であれば自宅でも簡単にできるストレッチは有効な治療方法と言えます。皆さんも是非ご自宅でやってみてください。
執筆 歯科医師/issy
国立歯学部卒業後、東京医科歯科大学歯学部附属病院で研修、現在勤務医として一般歯科、矯正歯科に携わっている。
日本口腔インプラント学会所属