妊娠と矯正治療について

矯正

大人になり、歯並びを綺麗にしたいと思う人は多いと思います。とりわけ20代から40代の女性は美に対する需要が高く、矯正治療を希望される方は多いです。その際に気になるのは妊娠と矯正治療の関係です。

矯正治療の流れ

Close-up. Girl with braces on the teeth, at a reception at the dentist

まず、矯正治療は基本的に以下の流れで行われます。

骨切りが必要な場合については除いています。

①どのような矯正器具を使用するか、どのくらい治療期間がかかるかの矯正相談

②精密検査(レントゲン写真の撮影や型取りなど)

③矯正前の前処置

(スペースを作るための便宜抜歯や、固定源を作るためのアンカースクリューの埋入、虫歯や歯周病の治療など。抜歯やアンカーなどは矯正中に行うこともあります。)

④矯正治療

⑤リテーナーに移行

妊娠時の矯正治療で問題になってくること

レントゲン撮影

矯正治療前の診断でよく撮影されるのがセファロ写真(頭部X線の規格写真)です。放射線の被曝量は1回0.03mSv(ミリシーベルト)程度です。日本人が1年間で宇宙線等から自然被曝する被曝量が世界平均2.4mSvなので、いかにレントゲンの被曝量が少ないかがわかります。さらに撮影の際には鉛の入った放射線から身を守る防護エプロンでお腹を覆うので、実際被曝する量はさらに少ないです。よって妊娠中であっても矯正治療前のレントゲン写真を撮影するのは基本的には問題ありません。もしどうしても気になるのであれば、9週から15週で赤ちゃんの臓器が作られる形態形成期を避けて撮影すればより安心です。

便宜抜歯やアンカースクリューの埋入

便宜抜歯やアンカースクリューの埋入は外科処置(観血的処置)となります。よって処置の初めにまずは麻酔薬使用します。麻酔に関しては、出産時にも使用するような麻酔薬(キシロカイン)を使用します。麻酔薬は肝臓で代謝され、胎盤を通過することはありませんが、麻酔時の痛みに対するストレスは存在するので、妊娠中は体調を考え、担当の歯科医師とよく相談して麻酔処置を受けると良いです。

外科処置を行うと必ずと言っていいほど、処置後に鎮痛剤や抗生剤が処方されます。鎮痛剤に関してはアセトアミノフェンが比較的安全とされていて、よく処方されます。商品名で有名なのはカロナールです。歯科でよく処方される非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)は妊娠後期に大量に使用すると、心不全が起こったり、胎児の体がむくんだりする可能性があるため、使用を控えた方が良いです。非ステロイド性消炎鎮痛薬で有名な商品名はロキソニンやボルタレンです。

妊娠中の外科処置を受ける際は、できるならば妊娠初期は応急処置にとどめ、妊娠安定期に入ってから処置を受けることをお勧めします。

矯正前の虫歯の治療や歯周病の治療

矯正前の虫歯の治療や歯周病の治療は必須です。治療しないと矯正装置の適合が悪くなり、歯が適切な位置に移動しなくなるからです。特に歯周病を発症すると、炎症物質が血液を介して子宮に伝わり、子宮収縮を引き起こすことがあります。これによって早産や低体重時出産が引き起こされます。また、歯周病に関連する細菌が胎盤に付着することもあるため、赤ちゃんが歯周病菌に感染する可能性もあります。

骨切りなど全身麻酔が必要な処置

骨切りなどの大きい外科処置が必要な場合は妊娠中は控えた方が良いでしょう。

出産後スムーズに治療に進んでいけるよう、妊娠中は虫歯や歯周病のケアに集中して下さい。

妊娠中にも矯正治療は継続できます。

pregnant woman put a toy heart to his stomach

一旦矯正治療が始まってしまえば、出産前後を除いては矯正治療を通常通りすることが可能です。矯正治療はしっかりと歯が動いているか、装置の破損等がないか、また追加の装置や補助装置の付与のため、1ヶ月に1回程度は歯科医院に通院する形が一般的です。しかし臨月が近づいてくると通院が難しくなります。出産前後1ヶ月くらいは体への負担が大きいため、通院を控えるよう指示を出す医院もあります。また体の状態により、また里帰り出産などで3ヶ月以上来院の期間が空いてしまうこともあります。このような場合は矯正による歯の移動が予定通り進まない可能性があるため、歯科医師の判断で来院できない期間は歯に力をかけず、現状維持を目指した方法をとる場合があります。

分娩時はマウスピース矯正などの可綴式の装置であれば外していただき、ワイヤー矯正などの固定式の装置であれば装着したままで大丈夫です。

出産後は赤ちゃんと来院しても大丈夫か心配な方もいらっしゃるかと思います。最近では赤ちゃんと来院可能とホームページ等で掲げている歯科医院や、保育士が常駐している歯科医院も存在するので、矯正治療をする前に妊娠する可能性がある場合はそのような歯科医院に通院されることをお勧めします。

妊娠中は女性ホルモンの一つであるエストロゲンの量が多くなります。エストロゲンの量が多くなると、口腔内の歯周病菌の数が増加するため、歯肉が腫れたり、赤く発赤したりしやすいです。よって毎日のセルフケアは今まで以上に必要です。可綴式の装置(取り外し可能な装置)の場合はセルフケアをしやすいですが、固定式の矯正装置の場合は非常にしにくいです。可能であれば通院時に口腔内のクリーニングを行うと良いと思います。

まとめ

妊娠中は様々な体の変化が起こります。妊娠中に矯正治療を行う場合は、お通いになる歯科医院とよく相談しながら治療を進めるようにしましょう。

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執筆  歯科医師/issy

国立歯学部卒業後、東京医科歯科大学歯学部附属病院で研修、現在勤務医として一般歯科、矯正歯科に携わっている。

日本口腔インプラント学会所属

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