矯正が保険適応になるパターン3つ
保険適応で矯正治療ができると聞いたのですが、本当ですか?
病気や3本以上永久歯の前歯が生えてこないことなどが原因で噛み合わせに異常がある重度症例は、厚生労働省指定の医療機関と矯正装置の使用で保険適応になる可能性があります。
じゃあ、お気に入りの歯科医院で見た目を治す矯正がしたい場合は自費ですか?
基本的にはそうなります。ただ、見た目の改善が目的でも指定の医療機関で検査をしてみると保険が使えることもあるんですよ。
今回は、矯正が保険適応になるパターン3つをご紹介します!
矯正が保険適応になるパターン3つ
矯正が保険適応になるのは、以下の3つのパターンです。
- 顎変形症で噛み合わせを治すのに矯正と顎を切る手術が必要な症例
- 永久歯の前歯が3本以上生えてこず、噛み合わせを治すのに外科処置が必要な症例
- 厚生労働大臣が定める疾患が原因で噛み合わせに異常がある症例
顎変形症で噛み合わせを治すのに矯正と顎を切る手術が必要な症例
顎変形症(※1)の治療は、基本的に
①術前矯正もしくはブラケット・手術用ワイヤーの装着
②顎の骨を切る手術
③術後矯正
の3ステップで行われるため、顎変形症の治療には矯正が必須です。
そのため、出っ歯、受け口、開咬などの原因が顎変形症によるもので、改善するために顎の骨を切る手術と手術前後の矯正が必要な場合は保険適応となります。
※1:顎変形症とは、上下の顎の骨の形や大きさ、位置に問題があり、噛み合わせの異常や顔面の変形が起こっている状態のことです。歯並びや噛み合わせが悪い原因が顎の骨にあるため、顔の形を見ただけでどんな不正咬合なのか予想できることもあります。
永久歯の前歯が3本以上生えてこず、噛み合わせを治すのに外科処置が必要な症例
大人になっても永久歯が歯茎の中に埋まったままで生えてこない状態のことを「永久歯萌出不全」といいます。前歯3本以上の永久歯萌出不全による噛み合わせの異常がある場合に、永久歯を萌出させるのに歯茎を切る手術(埋伏歯開窓術)が必要な症例は、保険適応となります。
厚生労働大臣が定める疾患が原因で噛み合わせに異常がある症例
厚生労働大臣が定める59の疾患(※2)によって噛み合わせに異常がある場合は、保険適応となります。いずれも症状のひとつに歯の本数や顎の骨の発育などの異常が報告されており、噛み合わせに支障をきたす可能性がある疾患が対象になっています。
※2:対象疾患は改正により変更されることがあります。
厚生労働大臣が定める59個の疾患
- 唇顎口蓋裂
- ゴールデンハー症候群(鰓弓異常症を含む。)
- 鎖骨頭蓋骨異形成
- トリーチャ・コリンズ症候群
- ピエール・ロバン症候群
- ダウン症候群
- ラッセル・シルバー症候群
- ターナー症候群
- ベックウィズ・ウイーデマン症候群
- 顔面半側萎縮症
- 先天性ミオパチー
- 筋ジストロフィー
- 脊髄性筋委縮症
- 顔面半側肥大症
- エリス・ヴァンクレベルド症候群
- 軟骨形成不全症
- 外胚葉異形成症
- 神経線維腫症
- 基底細胞母斑症候群
- ヌーナン症候群
- マルファン症候群
- プラダー・ウィリー症候群
- 顔面裂(横顔裂、斜顔裂及び正中顔裂を含む。)
- 大理石骨病
- 色素失調症
- 口腔・顔面・指趾症候群
- メビウス症候群
- 歌舞伎症候群
- クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群
- ウイリアムズ症候群
- ビンダー症候群
- スティックラー症候群
- 小舌症
- 頭蓋骨癒合症(クルーゾン症候群及び尖頭合指症を含む。)
- 骨形成不全症
- フリーマン・シェルドン症候群
- ルビンスタイン・ティビ症候群
- 染色体欠失症候群
- ラーセン症候群
- 濃化異骨症
- 6歯以上の先天性部分無歯症
- CHARGE症候群
- マーシャル症候群
- 成長ホルモン分泌不全性低身長症
- ポリエックス症候群(XXX症候群、XXXX症候群及びXXXXX症候群を含む。)
- リング18症候群
- リンパ管腫
- 全前脳胞症
- クラインフェルター症候群
- 偽性低アルドステロン症
- ソトス症候群
- グリコサミノグリカン代謝障害(ムコ多糖症)
- 線維性骨異形成症
- スタージ・ウェーバ症候群
- ケルビズム
- 偽性副甲状腺機能低下症
- Ekman-Westborg-Julin症候群
- 常染色体重複症候群
- その他顎・口腔の先天異常(☆)
☆「その他顎・口腔の先天異常」とは、顎・口腔の奇形、変形を伴う先天性疾患であり、当該疾患に起因する咬合異常について、歯科矯正の必要性が認められる場合に、その都度当局に内議の上、歯科矯正の対象とすることができる
出典:公益社団法人 日本矯正歯科学会「矯正歯科治療が保険診療の適応となる場合」
https://www.jos.gr.jp/facility
保険適応で矯正するためのそのほかの条件
保険適応で矯正できるパターンに該当しても、すべての歯科医院で保険適応の治療ができる訳ではありません。
保険適応で矯正ができる医療機関と使用できる矯正装置には、以下の2つの条件があります。
- 厚生労働省指定の医療機関であること
- 表側矯正であること
厚生労働省指定の医療機関であること
保険適応で矯正ができる歯科医院は、厚生労働大臣が認める施設基準を満たしている必要があります。そのため、保険適用で矯正がしたい場合は、保険医療機関として矯正を行う許可を得た歯科医院で検査を受ける必要があります。
保険医療機関でない歯科医院で保険が使えるか聞いても、判断できないので注意しましょう。
保険適応で矯正ができる歯科医院の見つけ方
保険適応で矯正ができる歯科医院は、地方厚生(支)局のHPから探します。
①地方厚生(支)局のHPhttps://kouseikyoku.mhlw.go.jp/から、自分の住んでいる地域、もしくは矯正を行う予定の地域のページへアクセスします。
②各ページのサイト内検索に「施設基準届出受理医療機関名簿」と入力し、歯科の「届出受理医療機関名簿」のPDFを探します。(※3)
③PDFを開いたらデバイスのページ内検索(※4)に「顎診」か「矯診」を入力します。
顎診・矯診とは、矯正治療で保険点数を請求する際に使われる用語です。
顎変形症に該当するか検査を受けたい方は「顎診」、3本以上の前歯の萌出不全や疾患による不正咬合の治療をお考えの方は「矯診」と表記のある歯科医院を検索しましょう。
※3:地方厚生(支)局によってPDFの様式や名前が若干違います。
※4:Windowsの場合「Ctrl + F」、Macの場合「⌘ command + F」
表側矯正であること
医科・歯科問わず、保険治療とは必要十分かつ最低限の治療を行うことを目的としています。
そのため、使用する矯正器具にも制限があり、歯に直接ブラケットを装着するタイプの矯正装置(ダイレクトボンド用ブラケット)を使用することになっています。
ダイレクトボンド用ブラケットに該当するのは、歯の表側にワイヤーを着ける「表側矯正」になるため、歯の裏側にワイヤーを着ける舌側矯正やマウスピース矯正は、保険適用の場合は使用できません。
矯正が保険適応にならないときは医療費控除が使える
保険適応のパターンに該当しない、もしくは舌側矯正やマウスピース矯正を行いたい場合の矯正費用は全額自己負担となりますが、医療費控除を使えば矯正費用の実質負担額を抑えることができます。
医療費控除とは、年間の治療費が10万円を超えた場合に所得税の還付と住民税の減額という形で治療費の減額ができる制度です。
噛む機能や発音機能を改善することが目的の矯正治療なら医療控除が受けられるので、活用しましょう。
自分の歯並びが保険適応で矯正できるか確認しよう
矯正には70〜150万円ほどの高額な費用がかかります。保険適応で矯正できる場合もあるので、気になる方は「顎診」「矯診」のある厚生労働省指定の歯科医院で確認してみましょう。
365dentistでは、
- 矯正をお考えの方の歯科医院選びのお手伝い
- 保険適応や医療費控除に関するお役立ち情報の配信
- 矯正に関するお悩みを相談できる歯科医師運営のオープンチャット
などを行っております。気になる方は覗いてみてくださいね!
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365dentist総監修 歯科医師/ゆきこ
長崎大学歯学部卒業、〜2018 九州医療センター、2018〜現在 都内歯科クリニック勤務
監修 歯科医師/Naomi
臨床研修終後、都内審美歯科勤務。現在は歯科医師/歯科ライター