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外科矯正とは?後悔しないために知っておきたいことを歯科医師解説!
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外科矯正とは?後悔しないために知っておきたいことを歯科医師解説!

矯正治療における外科矯正は、従来の矯正治療だけでは治療が困難である場合に適応になります。具体的に言えば、歯を並べるだけでは審美的、機能的に治療が難しい場合が、外科矯正を考える第一歩となります。外科矯正は手術が必要となるため、病院での入院、口腔外科、矯正歯科との連携も必要になるため、外科矯正を受ける側もしっかり理解して治療を受ける必要があります。また、外科矯正は治療にかかる高額な費用や治療期間の長さについても把握する必要があります。

どんな人が外科矯正の対象になるのか?

外科矯正とは

外科矯正が必要となる対象は、先に述べたように、従来の矯正治療だけで歯を並べるだけでは審美的、機能的に治療が難しい場合です。上顎や下顎が過度に成長してしまった場合や、成長不足になってしまうことによって生じる上顎前突や下顎前突、歯と歯が上手く咬み合わない開咬、左右の顎が非対称な場合などが対象となります。

外科矯正の対象年齢としては、基本的には成長発育が終了する10代後半から適応となるため、成長発育がまだ残っている小児の場合は対象にはなりません。そのため、小児の段階で外科矯正が必要な場合であっても、成長発育が終了するまでは手術を行わないことが通例です。

外科矯正の具体的な手順

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外科矯正を行うには、まずはしっかりとした診断が必要です。外科矯正は矯正専門医と口腔外科専門医が連携して行うため、連携可能な歯科医院や病院を受診する必要があります。そこでレントゲンや型取りをしてお口の中の模型を作り、外科矯正が適応か否か判断します。その後外科矯正が必要だと判断された場合は、外科手術前の術前矯正を行います。

この術前矯正は、外科手術後にスムーズに術後矯正に移行するために行われるもので、数ヶ月から2年ほどかかる場合もあります。術前矯正が終わると、いよいよ外科手術です。手術は数時間で終わるものがほとんどですが、1週間から2週間程度の入院が必要です。手術が終わると、術後矯正が始まります。術後矯正で、最終的な歯並びを整えていきますが、期間は1年程度から長いと3年近くかかることもあります。術後矯正が終わると、保定と呼ばれる動かした歯を固定させる治療に移行し、保定が終了すると、外科矯正という治療全体が終了となります。

矯正治療は歯が適切な位置に動いたら終了だと考えている人が多いですが、その後の保定は重要な矯正治療の一部であり、保定を怠るとすぐに歯並びが元に戻ろうとします。理想の歯並びを維持するためにも、保定は重要な治療としてとらえることが大切です。一般的な保定期間は2年程度です。

外科矯正のメリットとデメリット

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Advantages

何と言っても、骨格的に顔貌を変えることができるということです。従来の矯正治療では、言ってしまえば歯の並び方のみしか変えることができず、顔貌を骨格レベルで変えることができません。顔貌を変えることで、従来の矯正治療では不可能であった審美的、機能的な回復を見込むことが可能です。

demerit

まず、治療期間が長いということです。診査診断から始まり、術前矯正、外科手術、術後矯正、保定まで含めると、軽く4から5年はかかります。その間に手術による入院や、矯正歯科への通院を考えると、長期間における治療への協力度が求められます。次に費用の問題があります。

外科矯正においては保険適用になる場合と、保険適用外になる場合がありますが、例え保険適用になったとしても、数十万はトータルでかかります。

外科矯正を受けるならば、経済的な負担の覚悟は必要です。最後に外科手術によるリスクです。外科矯正における外科手術は上顎、または下顎の骨を切断し、前後に動かして固定する手術を採用します。上顎、または下顎の骨の中には血管や多くの神経が入っているため、これらを術中に傷つけると、神経麻痺や血管障害の後遺症が残る可能性があります。

保険適応になる条件とは

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外科矯正は一部保険適用になる場合があります。自分のお口や歯並びが保険適応になるか否かは、顎口腔機能診断施設に認定された矯正歯科を受診して、診断してもらう必要があります。どこの矯正歯科でも保険適用か否か判断できるわけではありません。

事前に矯正歯科に電話して聞くか、ホームページ等を確認するようにしましょう。保険適用になる場合は、顎変形症という骨格的に顎に異常がある場合や、先天的に疾患がある場合が適用対象となります。保険適応になった場合は、経済的な負担をかなり減らすことができるので有難いですが、保険適応のルール通り治療を進めなければならないので、制約もあります。

外科矯正をする前に知っておきたい歯科医師からのアドバイス

外科矯正は顔貌を根本から変えられるので、顎の骨の骨格的な問題を抱えている方には非常に有用な方法だと考えられます。しかし、治療が長期になることや、外科手術のリスクもあることから、リスクをよく考えて治療を選択するとよいでしょう。費用の面で言えば、保険診療が適用されない場合は、100万から200万前後の費用がかかります。医療費控除の適応にはなるので、控除枠をうまく利用し、少しでも経済的負担を減らすことも大切です。

とはいっても、一番大切なのは、信頼できる矯正歯科専門医と口腔外科専門医を探して治療を受けることです。治療を受ける前に説明をよく受け、分からないことは必ず質問して信頼関係が構築できるか判断する必要があります。最近ではサージェリーファーストという、術前矯正を行わないで、いきなり外科手術を行い、治療期間の短縮を目指す治療法など、従来の外科矯正の治療法とは良い意味で異なる治療法も出てきています。外科矯正で治療しようと決めたら、本当にこの治療計画で良いのかセカンドオピニオンをすることも有効かもしれません。

外科矯正も歯科医院選びが大切

外科矯正は出っ歯や受け口だけでなく、左右非対称などのズレも治療することが可能です。治療は長期に渡り、神経麻痺や血管障害といったリスクもあるため、治療内容をよく理解し、決断すると良いでしょう。外科矯正は治療しなくとも、命に直結する治療ではありません。見た目と機能の回復という観点からの治療の必要性をよく考えるべきです。

imageWritten by dentist/issy

国立歯学部卒業後、東京医科歯科大学歯学部附属病院で研修、現在勤務医として一般歯科、矯正歯科に携わっている。日本口腔インプラント学会所属