歯医者で麻酔を打ったところが痛いのはなぜ?麻酔の種類や注意点を解説!
歯科における麻酔は虫歯の治療や抜歯、インプラント治療などあらゆる部分に使用されます。
麻酔がないと歯科治療ができないと言っても過言ではありません。
麻酔は針を使用して歯ぐきなどに薬液を注入するため、針を刺す時の痛みだけでなく、麻酔後も痛みが出る場合があります。
歯医者で使う麻酔の種類
①表面麻酔
表面麻酔は針を使用せずに、麻酔の針を刺す表面に塗る軟膏状の麻酔薬です。
歯科ではよく使用され、子供用にフレーバーが付与されたものがあります。表面麻酔は軟膏を塗布するだけなので痛みはありませんが、表面麻酔したところを舐めると苦味を感じ、少しピリピリします。
②浸潤麻酔
一般的に歯科で麻酔と言えば浸潤麻酔のことを指します。注射針を組織に刺入して麻酔薬を入れていきます。歯科の浸潤麻酔で一番使用されているのがキシロカインという麻酔薬です。歯科では硬組織に効かせることが多いため、2%のキシロカインが使用されています(医科では1%)。
さらに歯科で使用するキシロカインには麻酔を長く効かせるために、血管収縮薬としてアドレナリンが添加されています。アドレナリンによって麻酔した周囲組織の血管が収縮され、麻酔が効く時間を長くすることができます。
③伝達麻酔
神経がたくさん集まる部分や、太い神経の近くに麻酔をすることによって、少量の麻酔薬で広範囲に協力に麻酔を効かせることができます。歯科の場合は下顎孔という太い神経が存在するところに伝達麻酔をすることが多く、作用すれば下顎の広範囲に麻酔を協力に効かせることができます。親知らずの抜歯の時に主に利用されます。
④鎮静法
鼻からまたは点滴により麻酔薬を体内に入れ、リラックスした状態で治療を受けることができます。
歯科医療に恐怖心のある方や、持病があり、歯科治療を受けるストレスに耐えることが難しい方に適応となります。大きな歯科医院では対応可能な医院もありますが、基本的には大学病院等の大きな病院での対応となることが多いです。鎮静法はリラックス状態にするだけなので、実際歯科治療を行う場合は別に浸潤麻酔や伝達麻酔が必要となります。
⑤全身麻酔
医科の手術の際と同じように、全身麻酔をして歯科治療が行われることがあります。通常は歯科疾患の中でも口腔外科領域の悪性腫瘍や良性腫瘍、顎変形症や嚢胞など治療の際に適応となりますが、一般歯科治療でも全身疾患や歯科治療に対する協力度が低い等の理由で、適応となることもあります。鎮静法と同じように大きな病院での適応となります。全身麻酔中には浸潤麻酔は必要に応じて打つ場合があります。
歯医者でどんな時に麻酔をする?
虫歯や歯の抜歯や外科治療が必要な場合など、歯科治療で痛みが生じる可能性が高い時に麻酔をします。小さい虫歯の治療をする時は、麻酔をしないこともありますが、少し大きめの虫歯の場合は麻酔をします。さらに虫歯が進行して神経の治療が必要な場合も、もちろん麻酔をします。
歯周病の治療の代表である歯石取りも、歯の表面上の歯石を取る場合は麻酔を行うことは少ないですが、歯肉の中の深い部分の歯石を取るときは麻酔をします。その他歯科治療に対する恐怖心が大きい場合も麻酔をすることがあります。
歯医者で麻酔前の注意点
歯科で麻酔を受ける前に注意しなければならないことは、まずは体調が悪くないかが重要です。浸潤麻酔に使用される麻酔薬の中には、麻酔を長く効かせるため、麻酔薬を組織内に貯留させるために血管収縮薬が含まれています。体調が悪い時に血管収縮薬が体内に入ると、余計に体調が悪くなる可能性があります。体調が悪い時の歯科治療は応急処置のみにし、麻酔を使用しての治療は後日にすることをお勧めします。アレルギー体質の人も注意が必要です。歯科で使用される麻酔薬に対してアレルギー反応がある人は稀ですが、全くないわけではありません。アレルギー反応が多く出る方は、事前に歯科医師に告知しておいた方が良いでしょう。
歯医者で麻酔後の注意点
麻酔を打ったところは、麻酔の量やその日の体調等にもよりますが、数時間は麻酔が効いた状態になります。麻酔が効いたところは感覚がないため、頬を咬んだり、食事がしにくかったりします。食事は麻酔が切れてからにしましょう。
また、麻酔したところは小さな傷になっているため、感染による腫れや痛みが出ないように清潔に保つことが大切です。
逆に言えばこれらのことが守れればいつもどおり生活することができます。
歯医者で麻酔を打ったところが痛い理由は?
①感染して痛い
歯科における麻酔は非常に細い針を使用して歯肉や粘膜に刺します。細い針を使用するとはいえ、針を刺すことによって細菌感染をすることがあります。細菌感染することによって痛みが出ることがあります。ほとんどの場合何もしなくても、1週間程度で治癒します。
②麻酔針による組織の損傷
麻酔針による組織の損傷によっても、痛みが出ることがあります。歯ぐきは軟組織のため自己修復機能が働き、何もしなくても数日で治癒することが多いです。
③麻酔薬による組織の壊死
浸潤麻酔に使用される麻酔薬には、麻酔薬を貯留させるために血管収縮薬が入っているものが多いです。麻酔を効率よく効かせるために必要な血管収縮薬ですが、副作用として血流不足で周りの組織が壊死する場合があります。
壊死する部分はほんの一部のため、自然治癒することがほとんどです。
歯医者で麻酔を打ったところの痛みが取れない場合は?
麻酔を打ったところの痛みが取れない場合は、通常は数日から1週間程度で治癒します。1週間以上痛みが長引く場合は、かかりつけの歯科医院を受信した方が良いでしょう。感染が長く続く場合は抗生物質が処方される場合が多いです。組織の損傷や壊死が起こっている場合はレーザー等で組織の修復を促進させたり、壊死部分を除去することもあります。
まとめ
歯科治療における麻酔は必要不可欠なものです。麻酔を打ったところに痛みが出るのは、決して確率が高くありません。
もし痛みが出てしまった場合の原因は、感染や組織の損傷や壊死などがありますが、通常は数日から1週間程度で自然に治ります。しかし痛みが長引く場合は、必ず歯科医院を受診するようにしましょう。
執筆 歯科医師/issy
国立歯学部卒業後、東京医科歯科大学歯学部附属病院で研修、現在勤務医として一般歯科、矯正歯科に携わっている。
日本口腔インプラント学会所属