口内炎だと思ったらガン?違いや見分け方を教えます。
口腔がんはがんの中でもそれほど発生数が多いがんではありません。しかし、有名人が口腔がんに罹患したことで世の中に知られるようになりました。
口腔がんとの見分けが難しいのが口内炎です。口内炎は口の中のできものですが、通常は数日から数週間で治癒します。数週間経過しても治癒しない口内炎は、口内炎ではない可能性があるため、注意が必要です。
口内炎とは
口内炎は様々な原因によって引き起こされる炎症病変です。
炎症病変のため、痛みを伴うことが多いです。原因はストレスや細菌感染、ウイルス感染、ビタミン不足など様々ですが、一つだけ発生する場合もあれば複数個発生する場合もあります。
口内炎の種類としては、
・ストレスやビタミン不足で引き起こされるアフタ性口内炎
・口腔内への刺激や入れ歯や被せ物の接触で引き起こされる外傷性口内炎
・ウイルスによって引き起こされるウイルス性口内炎
・カンジタ菌によって引き起こされるカンジタ性口内炎
の4種類があります。
❶アフタ性口内炎
円形の白い口内炎で、小さいものは数ミリですが、大きいものが1cm以上になるものもあります。
❷外傷性口内炎
赤くただれたり、白く潰瘍状になるのが外傷性口内炎の特徴です。
❸ウイルス性口内炎
高熱を伴い、粘膜に複数の水疱ができるのが特徴です。
❹カンジタ性口内炎
白い斑点が無数に発生し、手で触ると拭うことができるのが特徴です。基本的な免疫力が低下した場合にカンジタ菌は増殖することが多いです。
口腔がんとは
がんは悪性腫瘍のうちの一つで、体の中の細胞が異常に増殖した状態で、無秩序に他の器官に転移する可能性があります。悪性腫瘍の中には上皮系の組織から発生するがんと、肉腫という結合組織系から発生するものもあり、口腔内の場合は、がんがほとんどで、肉腫が口腔内で発生することは稀です。
がん細胞が増殖すると、体の様々な機能低下をもたらし、場合によっては死に至ります。口腔がんはがん全体の数%しか占めないため、あまり発生率は高くありませんが、日本では口腔がんに罹患する人が年々増えています。
口腔がんが他のがんと異なる点は、直接目視で確認できることが多く、自分で発見可能ながんということです。
口腔がんセルフチェック
口腔がんは多くのがんの中でも自分の目で発見することが難しくないがんです。
自分自身でのセルフチェックは以下のような項目があります。
・口内炎が数週間治癒しない
・抜歯した傷や、頬や舌を咬んだ傷がなかなか治癒しない
・入れ歯や被せ物でできた傷がなかなか治癒しない
・ただれやシコリ、原因不明の出血がある
これらの項目に一つでも該当する場合は一度かかりつけの歯科医院を受診した方が良いです。
口腔がんが一番発生しやすい場所は舌の辺縁です。舌を突出させて鏡で確認するとわかりやすいです。また、口腔がんと一番間違いやすいものが有郭乳頭と言われる舌の付け根にある突起物です。舌の付け根に口腔がんができることもありますが、可能性は低いです。
(出典元:名古屋市 口のがん(口腔がん)のセルフチェック)
口腔がんの原因
口腔がんの原因は様々ありますが、その中でもストレス、喫煙、義歯を含む不良補綴物に対する機械的刺激が主な発生原因です。
実はがん細胞は成人の体の中で毎日作られています。私たちの体の中には免疫というすばらしい機能があり、毎日できるがん細胞を攻撃して破壊してくれているのです。ストレスや喫煙、機械的な刺激が続くとこの免疫では対処できないほどがん細胞が増殖するため、がんが発生すると考えられています。
近年ではさらに研究が進み、毎日の食事の質や内容もがん発生に関与するといわれています。がんは生活習慣病なので、規則正しい生活をすることが予防につながります。
口内炎と口腔がん見た目の違い
口内炎も口内炎も発生すると、膨らみを持った異物に見えます。専門的には腫瘤とも言われます。
全ての口腔がんに当てはまるわけではありませんが、口腔がんは細胞が異常に増殖するため、一時的に腫瘤状になりますが、やがて増殖したがん細胞全てに栄養が行き渡らなくなるため、腫瘤の中央が陥没してきます。また口腔がんは正常な組織との境界が不明瞭なものが多いです。円形や類円形のものは口腔がんである確率が低いです。
口内炎と口腔がんの初期症状の違い
口内炎と口腔がんの初期症状は似ていることが多いです。
そのため、初期症状だけで判別することが難しいです。強いて言えば、初期の段階では口内炎は痛みが伴うことが多く、口腔がんの場合は痛みが伴うことが少ないです。また、口腔がんの場合は出血やシコリを伴うこともあります。
長引く口内炎は歯医者へ!口腔がんが疑われる時に受診する診療科はどこ?
通常口内炎は長くとも数週間で治癒します。数週間以上長引く口内炎は、一度歯科医院を受診することをおすすめします。口内炎であれば歯科医院で口内炎の塗り薬を処方される場合や、レーザーを照射して治癒を促進することがあります。
かかりつけの先生や開業医の先生が疑わしいと判断した場合は、大学病院などの中核病院へ紹介され、精密検査となります。最近では開業医の先生でも簡易的な口腔がん検査ができる機器を装備していることもあるため、事前にホームページ等で確認すると良いでしょう。
口腔がんの治療を担当する診療科は、歯科口腔外科、耳鼻咽喉科、形成外科など多岐にわたりますが、まずはかかりつけの歯科医院を受診することをおすすめします。かかりつけの歯科医院が歯科口腔外科を標榜していない場合は、歯科口腔外科を標榜している、または歯科口腔外科で研鑽していた先生の歯科医院を受診することがお勧めです。
まとめ
口腔がんは早く発見することができれば、それほど予後の悪いがんではありません。しかし、発見が遅れると予後が悪くなり、舌をはじめとする口腔内の組織や骨を切除するため、見た目の問題だけでなく、口腔内の機能低下を引き起こし日常生活にも影響を及ぼします。
口腔がんにならないために、まずは規則正しい生活が大切ですが、おかしいなと思ったらすぐに歯科医院を受診することをお勧めします。
執筆 歯科医師/issy
国立歯学部卒業後、東京医科歯科大学歯学部附属病院で研修、現在勤務医として一般歯科、矯正歯科に携わっている。
日本口腔インプラント学会所属