【歯科医師監修】年をとってからの歯列矯正は危険?!リスクやデメリットはある?
大人の歯列矯正は危険だと聞きました。大人は矯正できないのでしょうか?
いいえ、そんなことはありません。
基本的には歯と歯茎が健康な状態なら、何歳からでも歯列矯正は可能ですし、メリットも大きいです。
今回は、大人が歯列矯正をするリスクやデメリットを踏まえて、大人でも安心して歯列矯正を受けるためのポイントをご紹介します!
大人の歯列矯正が危険といわれる理由
大人が歯列矯正をするのが危険だといわれる理由は、以下のような3つの年代的特徴があるためです。
- 加齢変化による歯肉退縮、骨の硬化、口周りの筋力が低下が起こりやすい
- 被せ物やインプラントが多い傾向がある
- 年齢とともに歯周病リスクが高くなる傾向がある
「危険」といわれると、大人の歯列矯正には年齢制限があり、やらない方がいいようなイメージを持ってしまいます。
しかし、大人の歯列矯正で起こるリスクやデメリットの対処法をきちんと理解してから始めれば、歯の寿命を伸ばし、これから先の口や身体の健康の維持向上に大きなメリットが得られます。
大人の歯列矯正のリスクとデメリット
大人の歯列矯正では、日常生活に不便が生じたり、口のトラブルが起こるリスクや身体的・心理的なデメリットが生じたりすることが考えられます。
日常生活への影響
歯列矯正は年単位で長い時間がかかる治療のため、定期的に歯科医院に通うための時間を作る必要があります。
また、矯正装置の種類によっては見た目が気になったり、装置に慣れるまでは発音がしにくくなったりすることもあります。
口への影響
歯列矯正に伴って、以下のようなリスクが生じます。
- 痛み
- 歯肉退縮
- 歯根吸収
- 歯髄壊死
- 人工歯の作り直しやインプラントのやり直し
これらは大人の歯列矯正だけでなく、若年層の矯正でも起こりうるリスクですが、成長期の子どもよりも大人の方がリスクは高くなります。
基本的に、矯正歯科医はこれらのリスクを熟知しているため、歯にかける力のコントロールや動かし方などの工夫により、リスクを抑える治療計画の立案を行います。
ただし、これらの症状が避けられない場合や予想外に歯列矯正中に出現した場合は、治療計画の変更や追加の処置が必要になることもあります。
痛み
歯が動く痛みや、装着が口の中で擦れる痛みが出ます。
装置の種類によって痛みの感じやすさは異なり、ワイヤー矯正よりもマウスピース矯正の方が、装置の形状やシステム上、痛みが少ないです。
また、歯が動く痛みは3日ほどで落ち着くため、ずっと痛みが続くわけではありません。ワイヤーの調整後やマウスピースの交換後に歯が動く痛みがあるときは、痛み止めを服用することで軽減できます。
歯肉退縮
歯肉退縮は加齢や歯周病によって起こります。そのため、年齢が高くなるほど、歯列矯正による歯肉退縮のリスクは高くなります。
歯根吸収
矯正装置で必要以上に強い歯に力を掛けると歯が動く過程で、歯の根が短くなる歯根吸収が起こることがあります。
歯髄壊死
歯を動かすときに強い矯正力を掛けると、歯の神経にダメージが生じて、歯髄壊死を起こす危険があります。
歯髄壊死とは、歯の神経が死んでしまうことをいいます。矯正に限らず、虫歯や歯の神経の炎症などでも起こります。
人工の歯の作り直しやインプラントのやり直し
人工の歯は、歯列矯正をすると噛み合わせの高さや歯の大きさなどが合わなくなることがあり、歯列矯正のあとに作り直しが必要になることがあります。
また、インプラントは歯列矯正で動かすことができません。そのため、被せ物の作り直しだけで歯並びに合わせることができない場合は、インプラントを除去して埋め込みからやり直す場合もあります。
身体的・心理的影響
歯列矯正をすると歯並びや噛み合わせの変化、装置の違和感やストレスから、以下のようなことが起こる可能性があります。
- ほうれい線が目立ってくる
- ワイヤー矯正による金属アレルギー
- 顎関節症
- 不定愁訴(ふていしゅうそ)
ほうれい線が目立ってくる
歯並びが整うと、出っ歯や受け口などで出ていた口元が引っ込むため、口周りのボリュームが少なくなり皮が余って、ほうれい線やマリオネットラインが目立ってくることがあります。
ワイヤー矯正による金属アレルギー
ワイヤー矯正には、形状記憶の金属が使用されます。そのため、まれに金属アレルギーを発症する人がいます。
虫歯・歯周病リスクの上昇
種類を問わず、矯正装置を着けると歯に汚れが溜まりやすくなり、歯の汚れを洗い流す唾液の働きが弱くなるため、虫歯や歯周病のリスクが上昇します。
顎関節症
矯正中に一時的に噛みにくくなったり、噛み合わせが変化したりすることで、顎の関節に痛みを生じることがあります。
不定愁訴
矯正で噛み合わせが変化することや矯正装置を着けることによる違和感やストレスにより、不定愁訴を引き起こすことがあります。
不定愁訴とは身体的な原因が無いにも関わらず、肩こりや頭痛、食欲不振などの症状が生じることです。
大人の歯列矯正の危険を回避する方法
歯列矯正によるリスクやデメリットは多々ありますが、以下の方法で対処することも可能です。
- 大人独自の矯正リスクには別の治療を併用する
- 矯正治療専門の歯科医院を選ぶ
- ライフスタイルに合った矯正装置を選ぶ
大人独自の矯正リスクには別の治療を併用する
大人独自の矯正リスクには、主に加齢変化による歯列矯正への障害が挙げられます。この場合は、以下の3つの対処法があります。
- 骨が硬い場合はPAOO(スピード矯正)を行う
- 歯肉退縮が気になる場合は、歯茎の移植を行う
- ほうれい線が気になる場合は、歯列矯正のあとにヒアルロン酸の注入を行う
PAOOとは歯の骨に穴を開けて傷を付けることで、自己修復の力を利用して歯が動くスピードを早くする方法です。
歯周病で歯の周りの骨が少ない人に用いられる治療ですが、骨密度が高い大人の矯正治療でも歯の動きを早め、後戻りを防ぐために応用されています。
また、歯肉退縮とほうれい線は歯列矯正の治療計画だけではどうしてもカバーできないことがあります。
この場合は歯列矯正のあとに、歯肉退縮で歯の根が露出した部分に歯肉を移植したり、ほうれい線にはヒアルロン酸を注入したりすることで、改善できます。
矯正治療専門の歯科医院を選ぶ
できるだけ大人の歯列矯正のリスクを回避できる治療計画を立てるためには、知識や経験が豊富な矯正専門の歯科医院を選ぶのがおすすめです。
なかでも症例数が多く、自分の状態に合った説明や計画を立ててくれるか、術前検査やカウンセリングの時間をしっかり取ってくれるかなどを基準にするといいでしょう。
ライフスタイルに合った矯正装置を選ぶ
矯正装置は大きく分けてワイヤー矯正とマウスピース矯正があります。それぞれの利点と欠点を比較して、自分のライフスタイルに合った矯正装置を選びましょう。
例えば、仕事の都合でワイヤー矯正のような目立つ装置を歯の表側に着けられない人は、マウスピース矯正やワイヤーを裏側に着ける矯正、発音に支障が出ると困る方は、 取り外しのできるマウスピース矯正を選ぶなどして、自分に合うものを選びます。
大人の矯正のメリット
大人になってから歯列矯正を行うメリットは以下のようなものがあります。
- 矯正治療へのモチベーションが高い
- 第一印象がよくなる
- 口と全身の健康に繋がる
歯列矯正へのモチベーションが高い
大人になってからの歯列矯正は自分で高額な費用を負担することもあり、歯並びをきれいにしたいという気持ちが強い傾向があります。
そのため、歯列矯正へのモチベーションが高く、成功率もアップします。
第一印象がよくなる
笑顔が素敵に見えて清潔感のある雰囲気になれるため、自分の気持ちも明るく前向きになり、第一印象アップが期待できます。
営業や面談などで相手にいい印象を与えることができれば、仕事にも大きなメリットをもたらします。
口と全身の健康に繋がる
悪い噛み合わせは、顎関節の不調や歯のダメージを招きます。また、食べ物をよく噛めないことで消化不良が起こったり、肩こりや頭痛が生じる可能性もあります。
大人なると歯の擦り減りや歯周病の悪化、虫歯による歯の喪失などが原因で歯並びが乱れたり、噛み合わせが悪くなったりすることもあるため、気になる場合は口と身体の健康のためにも歯列矯正がおすすめです。
大人の歯列矯正は工夫次第で危険を回避できる
大人の歯列矯正には、若年層の歯列矯正とは少し違う条件や危険が潜んでいます。しかし、矯正装置の選択や歯科医院選び、追加の治療でリカバリーすれば、安全に歯列矯正をすることができます。
365dentistでは、大人の歯列矯正を安心して受けられる歯科医院選びのお手伝いをしています。
疑問や不安なことは、歯科医師運営のオープンチャットから相談もできますので、ぜひご利用ください!
関連記事:きれいな歯並びの条件とは
関連記事:大人の矯正費用って?成人矯正の種類による値段相場、費用内訳について!
関連記事:歯科矯正の種類を紹介!メインの3種類+αから自分に合った歯科矯正治療を選ぶためのコツ
365dentist総監修 歯科医師/勝屋友紀子
長崎大学歯学部卒業、〜2018 九州医療センター、2018〜現在 都内歯科クリニック勤務
監修 歯科医師/Naomi
臨床研修終後、都内審美歯科勤務。現在は歯科医師/歯科ライター