サージェリーファーストのメリットと注意点を徹底解説!費用も紹介
顎変形症は顎骨の発達異常によって引き起こされる疾患です。顎変形症になると見た目の問題だけでなく、機能的にも支障が出ます。
サージェリーファーストは顎変形症の新しい治療で、従来顎変形症の外科手術の前に行う術前矯正を省き、すぐに外科治療を始める治療方法です。サージェリーファーストにはメリットとデメリットがあります。
そもそも顎変形症とは?
顎変形症とは顎骨が過剰に成長、あるいは成長不足によって見た目や咬み合わせに問題がでる疾患です。軽度の顎変形症の場合は従来の矯正治療のみで治療することも可能ですが、根本的に解決したい場合や中等度以上の顎変形症の場合は、顎骨を切断することによる(骨切り)外科手術と矯正治療の併用で治療していきます。
外科手術と矯正治療を併用していく場合、まず術前矯正という外科手術前に動かすべき歯を矯正治療で動かします。これは、外科治療後のかみ合わせを悪くしないようにするためです。その後外科手術をし、手術が終了したら仕上げの術後矯正を行います。
サージェリーファーストとは?
サージェリーファーストとは顎変形症に対する新しい治療方法で、従来の術前矯正を行わずいきなり外科治療を行う方法です。サージェリーファーストは矯正治療と外科治療の両方を行うため、矯正医と口腔外科医の連携が重要になってきます。
③サージェリーファーストを選択するメリット
①治療期間が短くなる
サージェリーファーストを選択するメリットは、まず何より治療期間が短く、見た目の改善が期待できるという点です。従来の顎変形症の治療だと、術前矯正を行わなければならないため、必然的に治療期間が長くなってしまいます。また術前矯正を行うと、外科手術後の顎の位置を想定して歯を動かすため、一時的に見た目が元より悪くなる可能性もあります。サージェリーファーストでは外科手術をいきなり行うことで早期に骨格的な治療が可能となり、見た目の改善が早くなります。
②術後矯正の歯の動きがよくなる
サージェリーファーストにはもう一つ重要なメリットがあります。それは外科手術を早期に行うことで、術後矯正の歯の動きが良くなることです。顎変形症の手術の場合、外科手術の際に骨切りを行います。この骨切りによって骨を治そうとする力が身体に働き、この力によって歯が動きやすくなります。
④サージェリーファーストを選択するデメリット
①健康保険の適応ではない
サージェリーファーストのデメリットはまず健康保険の適応ではないことです。従来の顎変形症では矯正厚生労働省指定の「顎口腔機能診断施設」を受診することで、すべて保険適用になるわけではありませんが、保険適用で顎変形症の治療が受けられる症例が多くあります。
サージェリーファーストの場合は「顎口腔機能診断施設」を受診しても保険適応になることはありません。よって費用は高額になります。
②全ての顎変形症を扱う病院で適応ではない
顎変形症の治療は矯正歯科、歯科口腔外科、形成外科などの複数の診療科が連携して行います。ですから全ての矯正歯科や歯科口腔外科で顎変形症を診療対象としているわけではありません。顎変形症を診療対象としている診療所や病院があったとしてもその中からサージェリーファーストを対応してくれるのはさらに限られるというのが現状です。
③手術後一時的に咬みにくくなる
サージェリーファーストは術前矯正を行わないために、手術後一時的に咬み合わせが悪くなることが多いです。その場合はマウスピースを作製して補います。咬みにくくなることで食事が取りにくくなったり、喋りづらくなったりすることもあります。
⑤サージェリーファーストの費用
サージェリーファーストは健康保険が適応ではないため、自費治療となります。自費治療の場合、治療を受ける施設ごとに費用が異なるため、具体的な金額を述べることはできませんが、矯正治療費以外に手術入院費で150~200万程度かかる可能性があります。
サージェリーファーストの治療は一つの病院や診療所で完結することもありますが、手術は大きな病院、その後の矯正治療は一般的な矯正歯科で行うこともあります。その場合、両方の病院や診療所でかかる総額の費用を、治療を受ける前に確認することをおすすめします。
⑥サージェリーファーストの流れ
①術前の診査診断
サージェリーファーストの適応が否かをまずは診査診断をしなければなりません。サージェリーファーストでの顎変形症治療が対応可能な病院で行うようにしましょう。
②術前の準備
サージェリーファーストが適応となった場合、まずはお口の中をクリーニングし、外科手術の際にリスクのある口腔内の感染症(虫歯や歯周病)を除去します。その後必要に応じて、手術後の矯正治療を円滑に進めるために、手術前に矯正装置を装着することもあります。
③外科手術
サージェリーファーストのメイン治療である外科治療を行います。市中の矯正歯科でサージェリーファーストの適応と診断を受けた場合は、提携先の全身麻酔での手術が可能な施設で受けることもあります。下顎のみの簡単な手術であれば、入院せず日帰りでも可能です。
④手術後の矯正治療
手術後は口の中が腫れたり、痛みが出たりするので、数週間は口が開かない状態が続きます。1か月ほど経つと口が開くようになるため、ここから矯正治療が開始になります。サージェリーファーストの場合は歯が動きやすくなっているため、手術後の矯正治療にかかる期間は1年前後であることが多いです。
⑤保定
矯正治療終了後は歯が後戻りしないために保定を行います。保定は最低2年間は行った方がよく、それ以上の期間保定をするか否かは歯を動かした量によって判断します。
まとめ
サージェリーファーストは顎変形症の治療の中でも治療期間が短く、見た目の改善が早くなるといった特徴があります。保険適応でないので、費用が高額ですが、早く見た目の改善をはかりたいと考えている方は適応がどうか診断してもらうと良いです。サージェリーファーストは簡単な治療ではないので、矯正医と口腔外科医の連携がしっかりとれているところで治療を受けるようにしましょう。
執筆 歯科医師/issy
国立歯学部卒業後、東京医科歯科大学歯学部附属病院で研修、現在勤務医として一般歯科、矯正歯科に携わっている。
日本口腔インプラント学会所属